66回生 ベイノア

同窓生シリーズ 第102回

押忍おす。今やっていること、やりたいことに全力を注ぐ!

格闘家として活躍する傍ら、お笑い芸人としてもステージに立つ”ブラックパンサー”ベイノアさん。小学生の頃から現在まで通う空手道場で、楽しくもためになるお話をたくさん聞かせてくださいました。

”ブラックパンサー“ベイノアさん

ブラックパンサー ベイノア “BlackPanther”Beynoah

1995年 アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ
2006年 国際空手道連盟 極真会館入門
2012年 『全日本高校生空手道選手権大会』中量級 準優勝
2014年 新宿高校卒業
2015年 『ピーターアーツスピリット(現アマチュアキックボクシング全日本選手権)』-70kgトーナメン優勝
2016年 キックボクシングプロデビュー
    『J-NETWORK』(キックボクシングの大会)ウェルター級新人王獲得
    『第48回全日本空手道選手権大会』(無差別)新人賞獲得
2017年 『第34回全日本ウエイト制空手道選 手権大会』軽量級 準優勝
    『J-NETWORK』ウェルター級 王座獲得
2018年 『第35回全日本ウエイト制空手道選手権大会』軽量級 優勝
    『M-1グランプリ2018』(漫才バト ル)2回戦進出
     第2代『RISE』(立ち技打撃格闘技) ウェルター級 王座獲得
2019年 『R-1ぐらんぷり2019』(“ひとり芸”の大会)2回戦進出
2021年 『RIZIN.28』(総合格闘技の大会)東京ドーム大会出場

格闘技との出会いを教えてください。

”ブラックパンサー“ベイノアさん
お絵描きを楽しむベイノアさん

 仕事の都合で父はアメリカに住んでいたので、母と姉の3人で喧嘩とは無縁の穏やかな生活を送っていました。
 僕が小学4年生の時、一時帰国した父が、外で遊ぶよりお絵描きを楽しむ自分を心配し、鍛え直してもらおうと連れてきたのが、ここ成増道場でした。全く闘争心が強いタイプではなかったので、しばらくは試合に出ても勝てませんでしたね。それが変わったのは中学3年生の頃。受験勉強のため半年間道場から離れ、勉強の合間に格闘技の映像を見るのですが、改めてその面白さに気付きました。
 それまで毎日のように通い、生活の一部だった空手から離れたことで、本当の意味で格闘技に目覚めたんでしょうね。

新宿高校ではどんな生活を送っていましたか?

”ブラックパンサー“ベイノアさん
新宿高校の校舎で友達に撮影してもらった1枚

 硬式テニス部に所属し、夕方5時まで練習をした後、道場で稽古をする毎日を送っていました。アメリカ人の父を持つこともありこの体格なので、入学直後は色んな部活に勧誘されて。素振りのフォームを見た先輩から「めちゃくちゃ素質あるよ!」と言われ、その気になって硬式テニス部に入部しました。でも、実際にボールを打ってみると・・・そう簡単には行きませんでしたね(笑)。球技にはあまり向いていなかったようですが、友人と一緒に明治神宮周辺を走ったり筋トレをしたりするのは楽しく、空手にも役立ったと思います。
 3年生の朝陽祭では、盛り上がって楽しそうな出し物やダンスを希望していたのですが、クラス投票で飲食担当に決まってしまいました。店の名前はなぜか「カレーとポテトの店・ベイノア」に。自分は販売係でしたが、テーブルを回りながら歌手になりきって自作の曲を歌っていました(笑)。その頃から人を楽しませるのは好きでしたね。新宿高校の生活は楽しかったです。当時の先生や友人は自分の試合を見に来てくれたり、応援メッセージを送ってくれたりと、今でもつながっています。

挑戦を続けるベイノアさん。これまでで最大の挑戦は?

 新宿高校の自動販売機に炭酸飲料を加えてもらったことかな(笑)。炭酸が好きだったので生徒総会で提案し、反対する先生方とも何度か交渉して入れてもらいました。

今の新宿生が炭酸を飲めるのは、ベイノアさんの「自販機革命」があったからなのですね。

 喜んでもらえていたらうれしいですね!卒業後の最大の挑戦は、やはり総合格闘技の大会『RIZIN』への出場です。RIZINはTVでも放映されるので、他の格闘技に比べて圧倒的に知名度が高く、格闘技に詳しくない友人から「出てみたら?」と言われたこともあり、出場を決めました。ただ、自分が闘ってきた空手やキックボクシングとはルールが違う。経験したことのない寝技に持ち込まれるかもしれない。出場が決まってから試合まで一カ月ほどしかなかったので、複数の道場の協力を得て集中して稽古に励みました。残念ながら判定で負けてしまいましたが、東京ドームのマットに立つのは格別でしたね。

”ブラックパンサー“ベイノアさん
2021年、『RIZEN.28』に出場。対戦相手の弥栄ドミネーター聡志選手には、対戦後、総合格闘技の指導をしてもらっている

そんな大きな挑戦に対して、不安はありませんでしたか?

 どんな試合展開になるのか想像も付かず、怖さや不安が全くなかったわけではありません。でも、物事を前向きに捉え、挑むことのほうが大事だと思っています。例えば、自分はアメリカ人と日本人のミックスなのでそのことがコンプレックスになり得るかもしれないけど、生まれ持ったフィジカルの強さは格闘家としてプラスに働く。父親譲りのノリの良さも自分を助けてくれることが多い。試合でもポジティブに闘いに臨むと、明らかにパフォーマンスが上がります。メンタル面の影響は大きいですよね。リスクばかりを考えていたら何も始まらない。いろんな格闘技に挑戦してきたからこそ、そう思えるのかもしれません。

”ブラックパンサー“ベイノアさん
2021年、沖縄で開催された『RIZEN.32』で勝利した瞬間

ベイノアさんを奮い立たせる原動力は?

”ブラックパンサー“ベイノアさん
2018年、22歳の時「第35回 全日本ウエイト制空手道選手権」軽量級で優勝

 応援してくれる人、特に空手を教えている道場の子どもたちです。試合を見に来てくれた時に自分が劣勢に立たされていると、本当に泣いてしまう子どもたちがいて。それを見ると、子どもたちを笑顔にするために頑張ろうと強く思うんです。
 それから、格闘技をもっとたくさんの人に見てもらうために、自分ができることをしたい。もちろん勝つことは大事だけど、観客に楽しんでもらうのもプロとしての役目。お笑いをやっているのも「多くの人に格闘技を知ってもらい裾野を広げたい」という思いからです。

新宿生へのメッセージをお願いします。

今やっていること、やりたいことに100%の力で取り組んでほしいです。気になることがあったら、まずは「やってみる」「行ってみる」「調べてみる」「人に聞いてみる」。そして、その瞬間に100%集中する。そうすることで、新たな道が拓け、流れが生まれると思うんです。それから、自分の「モチベーションの作り方」を押さえるのも大事。モチベーションがどうやったら上がるのか、色々試しているうちに自分に合った方法が見つかるはずです。
 どうしてもモチベーションが上がらない時は・・・。そのことから少し離れて、休むことですね。自分もトレーニングの最中に「次の会見では何を話そうか?」など関係ないこと考え始めてしまう時がありますが、それではトレーニングの効果も薄れる。勉強や部活も同じで「やる時はやる」。どうしてもやる気が出ない時は、時間を決めてスマホを見るなど休憩してもOK。 目標を持つことも絶対大事だと思います。子どもたちを指導していても、「練習しないと師範や親に怒られるから」というマイナスの気持ちで取り組んでいる生徒より、「強くなりたい」「大会で勝ちたい」など自分の目標を持っている子どもは、断然上達が早いです。

最後に、ベイノアさん自身の今後の目標、夢は?

米国発で世界最高峰の総合格闘技「UFC」の大会で闘うこと。格闘技の世界で限界まで挑戦したいですね!押忍。

試合解説のお仕事の直前にお時間を取ってくださって、ありがとうございました!

強く、楽しく、そして道場にお邪魔するとさりげなくお水を持ってきてくださるなど、気配りも抜群のベイノアさん。これからも応援しています!